森に続く小径

ただいまのところ、

19編の詩を、載せています。

2014/3/20

久闊を叙する

手を握り 挨拶する

お久しぶり・・・と

遅くなったね やっと逢えたね

幼い日の ワタシ

 

つないだ手と手は

過去と現在を結ぶ ククリ

(2013/12/5)

空に

空に むかって

両手を ひろげ

さよならを する

不安も 期待も

不満も 失望も

さようなら

 

そうしたら

胸に 残った

本当の 気持ちだけ

ちからいっぱい

抱きしめられる

(2013/12/7) 

背 中

彼女は

自分の背中が いかに美しいかを 知っていた

 

「ジムに行って鍛えてもダメよ

ダイエットしてスリムになっても 

どんなステキな服を着たって ダメなのよ

そんなの、自己満足に過ぎないじゃない?

背中には 本人の気づかない全てが 現れているの

ただ 自分の背中が美しいと 知るだけでいいのよ」

 

布切れ一枚 身にまとわない

素のままの背中を 想像してみてほしい

それは

鏡に映った自分の顔よりも

ずっと ずっと

真実に近い 自分なのかもしれない

(2013/12/7) 

なんどもなんども 何度でも

朝日のシャワー

全身にあびて

 

なんども なんども

両手をひろげ

さしだす さしだす

 

縮みそうな寒い朝も

涙でくもりそうな朝も

 

さしだす さしだす

なんども なんども 何度でも

(2013/12/14) 

YES!

過ぎ去った出来事の 記憶を

洗い流すことは できない

 

ただ

抱きしめて あたためるだけ

 

ほんの一瞬でいい

もしも きみが

わけもなく

優しさに包まれていると 思える瞬間があったなら

そのとき

君の腕の中を そっと 覗いてみてほしい

 

あたためられた 記憶のすべてが

何か、全く別なものに 

変容してはいないだろうか

 

それは

僕からの ささやかな贈り物

過去という名で 見えなくさせられた

本当の今

悲しみさえ 愛に変える

魔法

 

どうか

受け取ってくれるなら

ここにサインをしておくれ

唇に・・・YES!と

(2013/12/15)

カタチ占い

彼女の せいかくは

限りなく 円に近い 多角形

 

今日の あなたの運勢は

底辺が正方形の、

空に向かってどこまでも伸びる 

超次元立体の四角柱

(2013/12/16) 

波と凪

打ち寄せては 引き

また 

打ち寄せる 波

 

その波の上に 

もうひとつの 見えない逆さの波があり

 

見える波と

見えない波が 重なり

打ち消し合う瞬間

 

海は 静かに 凪ぐ

 

一瞬の世界の中に

感じる 久遠の世界

(2013/12/17)

信頼という言葉が 意味の変容を起こす時

疑いは 幾通りもの状況のパターンを 生んでいく

分裂に次ぐ 分裂・・・その繰り返し

まるで 合わせ鏡の回廊のよう

 

だけど

信頼は 一つだけ

条件も 理由も 根拠もいらない

 

もしも、状況によって(相手の出方次第で)

「信じる」のパターンもたくさんあるというなら

それは 

「疑う」の対義語として派生した「信じる」という言葉に過ぎない

 

そんな「信じる」という言葉が

意味の変容を起こす時

疑いは、跡形もなく消えて

 

やはり

信頼は たった一つだと 知る

(2013/12/17)

闇とは 「存在しないもの」の異名

彼女は言った

 

光と闇は 対立しない

だって、

光を当てたら 闇は消えるけど

闇はどこにも 当てることはできないもの

 

闇に力なんて あるはずがない

悪意だって ないんじゃない?

 

どちらが強いとか 弱いとか

そんな問題じゃないと思うわ

 

ただ 

「ある」を選ぶのか

「ない」を選ぶのか・・・

それだけなのよ

きっと

 

そして 

あなたが存在しているのだから

それは もうすでに「ある」

ということなんじゃないかしら

 

だから

闇と闘う必要はなくて

光を当てていくだけでいいんだわ

 

光って?

そりゃあ もちろん

あなたの『まなざし』のことよ

(2013/12/18) 

樹間をわたる風

目を瞑り、心の羽根を いつもの森に飛ばしてみる

樹間をわたる風が 朝霧をはらしてゆく

 

彼女の言葉が 思い出される

「樹海はね 

あなたを のみこみはしない

ただ 風が吹くのを 待てばいいのよ」

 

あの日、彼女は何を見ていたのだろう

 

彼女の瞳を覗き込んでも

そこには ただ

幼い私が 映っていただけ

(2013/12/19)  

hanasu

『舞う・・・』

心に沸き上がる情動を

解き放つように、舞う

体で話す 風との対話

 

『奏でる・・・』

心に押し上げてくる感情を

手離すように、奏でる

体で話す 楽器との会話

 

放したい時

離したい時

話したい時

 

誰もいないと感じても

受け取る存在(もの)は

必ず いる

(2013/12/20)

冷たい雨

冷たい雨の ひとしずくが

小さな音符に 変わった

 

幸せの ひとしずくが

小さな やすらぎを もたらし

 

空から降るもの すべて

白い雪に カタチを変えて

 

降り積もる 

ふりつもる・・・

(2013/12/22)

一陽来復

冬の陽射しは

ことさら あたたかく

 

冬の夕陽は

ことさら まばゆい

 

冬至の夜を 静かに迎え

一陽来復を 待つ

(2013/12/22) 

いのり

両手が 

祈るためにあるとするなら

右手と左手が 

互いに正反対であることに 感謝しよう

こんなにも ぴったりと 

てのひらを 合わせることができるのだから

 

『あなた』の心と 『わたし』の心が

すきまなく 重なり合うとき

それは もしかしたら、

神の両手が わたしたちを通して

祈りを ささげているときなのかもしれない

 

『あなた』の体と 『わたし』の体が 

互いを求め合い、重なりあう姿は

神の祈りの姿にも似て・・・

 

渇望の向こうに 垣間見える 

いまだ秘せられたままの愛が

女性の胎内に 新しい命を 宿す

 

だから、生命の誕生は

どんな場合も 祝福される 

(2013/12/22)

空っぽ

「私達って、本当は空っぽなんじゃないかしら」

彼女は ふふっと笑って 言った

「私達って?あなたと私のこと?」

私の問に、彼女はきっぱり こう答えた

「違うわ。『ワタシ』が私で、『タチ』があなたよ」

「何?」

「冗談よ」

彼女は 優しく笑う

 

つまりね、

私達は、誰でもみんな、空に心が あるんじゃないかって・・・

自分だと思っている自分は

生まれてから ずっと、なにかしら得たもの、獲得したものばかりで

それが悪いとかって言うのじゃないけど

ある意味、荷物をたくさん抱えてるようなものかもしれない

 

「荷物を持たない心は、軽くなって、羽がはえたみたいに空も飛べるってこと?」

 

う~ん、

そうとも言えるかな?

 

「違うの?」

 

空は・・・私たちの心が、外に現れたものじゃないかってこと

つまりね

外に見えている空が、内側に包まれて

見えなくなってるのが心なんじゃないかしら

だから

どこまでが誰かの空だって、境界線は引けないように

どこまでが 自分の心だって、境界線も引けない

 

「荷物をおろした心の場合?」

 

そう、荷物なんて持たない心の場合

(2013/12/23) 

ピリオド.

ちっちゃな たった一つの点が

確実に それを 終わらせる

 

終わる・・・

という いし

終わった・・・

という しるし

(2013/12/23)

 

ピリオドの内部に広がる 空と海

「自分」を知りたくて

「自分」という人間を 

問わず語りに 説明し、ひとりごちた 解説文に

ピリオドを 打つよ

 

書いている自分こそが 「自分」であるのに

書かれた文章の中に 「自分」があると 

勘違いを 重ね続けていたんだ

 

それで

解説が、更なる解説を必要として

どんどん どんどん 

意味の無い 説明だけの「自分」が拡大していった

 

小さな点の内部へと 体ごと投げ入れて

ピリオドの内部に広がる海で

背泳ぎするんだ

空を眺めながら・・・ね  

 

ピリオドは

迷いの世界の拡散に 終わりを告げる点

やっと 始まりの地点

2013/12/25

Smile!

横浜駅のホームで

電車を待っていた 冬の夕暮れどき

 

仕事の疲れから

頭痛と、軽い吐き気があって

私は 多分、しかめっ面をしていた

 

唐突に、横から

「Smile!」

と声がした

 

背の高い 白人男性が、私を見て微笑んでいる

私は、

頭が痛くて 笑えないのだ・・

と、ごく短い英語で応えた

 

全く知らない人だった

 

彼は、なおも私に微笑みかけて

「Smile」と言った

 

そのあと、いくらか会話を交わし

いつの間にか、私は笑っていたが

別れ際に、もう一度

「Smile!」

と言われた時、

私は、ちょっと複雑な気分になった

頭が痛いから笑えないと言った 最初の自分の言葉を思い出したから

 

知らず知らず笑っていた自分が なんとなく後ろめたいような

嘘つきだったみたいな・・・

 

それは、全くバカげた考えだけれど

それに似たようなことを 普段からよくやっている自分に気がついた

一度言ったことはやり通さなきゃ・・・みたいな

 

ホント、バカだね

笑っちゃう

間違いを取り消すのに 言い訳なんていらない 

ただ、ありがとうって言えば良かったんだ

 

 

ずいぶん遅くなったけど

「Thank you!見知らぬ人」

2013/12/26 

kiri

街を歩いていたら

誰かが私についてきているのを 感じた

それは、真後ろ・・ではなく

頭の上

 

少し首を後方に向けて 上を見た

 

ちょっと大き目の“わたがし”みたいなのが、

手が届きそうで届かないあたりに、浮いていて

立ち止まるようにして 私を見ている

 

「あなた、私についてきてるの?」

そう・・

「まわりの人たちには、あなたが見えてないみたいだけど?」

そう、見えていない・・

「声も聞こえてないの?」

聞こえていない・・

「じゃあ、私、変な人に思われるね。空を見上げて独り言なんて」

大丈夫。ここは、君の夢の中。

みんなは、君の夢の登場人物だから。

「そうなんだ・・」

 

私は、まわりを見回したが、知りあいは一人もいない

 

「ね、あなた、名前は何ていうの?」

kiri・・

「キリ?変わった名前ね」

君は以前、僕のことをジウって呼んでた

「えっ?」

幼い頃のことだから、覚えてないのも無理はない

 

「また 会えるの?」

いつだって、僕は君のそばにいたよ

これからだって、離れることはない

君が思い出しさえすれば・・

だって、僕は君の・・・

「わたがし?」

違うよ・・・あはは・・

“わたし”って言ったんだ

2013/12/29